[Review] ていねいに美しく暮らす 北欧デザイン展
北欧の有機的で美しいデザインには暮らしや思想が強く影響しています。北欧では19世紀末から「美が人生を豊かにする」という考え方が浸透し、現在の北欧社会の豊かさにつながりました。
本展では、椅子研究家の織田憲嗣(のりつぐ)氏が収集、研究してきた家具や日用品をもとに会場を5つの章に分けて構成。約8,000点に及ぶ所蔵品から厳選した約300点を展示する、織田コレクションの全貌に迫る初の展覧会です。
北欧のデザイナー総勢70名以上による作品を展示し、ハンス J・ウェグナー、タピオ・ヴィルカラなど巨匠10名については特集してご紹介。また、現地で暮らす人々の日常生活の映像もご覧いただきます。北欧のデザインがもたらす力に改めて気づくことのできる展覧会です。
-Takashimaya HPより
椅子と生きる~Chairs for life~・デザインの源泉~Design beginnings~・心の居場所~Where the heart is~・美しい同居人~Handsome housewares~・ていねいに暮らす~Living mindfully~からなる5章のテーマにて展示が構成されています。
デンマークの家具については Aksel Bender Madsen(アクセル・ベンダー・マドセン)&Ejner Larsen(アイナ・ラーセン)、Borge Mogensen (ボーエ・モーエンセン)、Frits Henningsen(フリッツ・へニングセン)、Jacob Kjaer(ヤコブ・ケア)、Arne Jacobsen(アルネ・ヤコブセン)、Finn Juhl (フィン・ユール)、Grete Jalk(グレーテ・ヤルク)、Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)、Kaare klint (コーア・クリント)、Ole Wanscher (オーレ・ヴァンシャー)、Poul Kjaerholm (ポール・ケアホルム)、Peter Hvidt Orla Molgaard Nielsen (ピーター ・ ヴィッツ&オーラ ・ ミュルゴーニールセン)などの家具の展示がありました。
特に印象に残った椅子はアクセル・ベンダー・マドセン&アイナ・ラーセンのメトロポリタンチェア・オーレ・ヴァンシャーのアームチェア・ハンス・ウェグナーのザチェア(プロトタイプ)です。
■Aksel Bender Madsen&Ejner Larsen / Metropolitan Chair
メトロポリタンチェアは1949年にデザインされ、1961年に開催された展示会の際にメトロポリタン美術館がこの椅子を購入したことから、メトロポリタンチェアと呼ばれるようになりました。成形合板製の背もたれだからこそ実現したダイナミックなフォルムの背もたれ、美しく湾曲した座枠や貫のないすっきりとしたプロポーションなど完成度の高いチェアです。現在Carl Hansen & Son(カールハンセン&サン)より復刻生産をされていますが、展示されていたのはオリジナルのWilly Beck(ウィリー・ベック)製の作品です。フォルムの美しさが際立っているように感じました。
■Ole Wanscher / Arm Chair
名工A. J. Iversen(A.J イヴァーセン)により製造された作品です。こちらの椅子はメトロポリタンチェアやザチェアのように有名な椅子ではありませんが、その美しさに圧倒されました。 1958年にデザインされたPrincess chairと同様に後脚が座枠の中央に配置したデザインが印象的です。16世紀にフランスで流行したカクトワールという優美な椅子をリデザインしたと思われます。一見するとシンプルな造りに見えますが、ひじ掛けの彫刻的なフォルムや脚部の座枠との連結部分、座枠の形状にデザインのこだわりを感じました。材に使用されているブラジリアンローズウッドがこちらの作品をさらに特別なものにしています。
■Hans J. Wegner/The Chair.JH503(prototype)
ウェグナーのチェアの中でも代表作であるThe Chair.JH503のprototypeです。ウェグナー本人のインタビュー映像があり、「今までなかった椅子を作りたかった。まず素材はデンマークらしいオーク材にすると決めた。接合部のデザインは家具職人だからこそ思いついたデザインだ。」と答えていました。prototypeの接合部を見て、ウェグナーが試行錯誤の末に美しいフィンガージョイントを生みだしたことを知ることができました。ひじ掛けのフォルムもPP Mobler(PP モブラー)製の現行品に比べシャープで美しいと感じました。
家具の展示構成も素晴らしく、日用品についても新たな発見がありました。良いデザインが暮らしや人に良い影響を与え、心が豊かになることを再確認できると思います。北欧の暮らしに惹かれる理由が見つかる素晴らしい展覧会でした。
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